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定年退職が近づいた方、依願退職を考え始めた方、自衛官のご家族の方、いらっしゃいませ。
退職に関連する手続きや準備について不安が出てくるのは当然です。定年退職か依願退職かにより、準備すべき内容も大きく異なります。(処分による免職については本記事では触れません)
それぞれのパターンに沿って、実体験と知人の事例を交えながらお話ししていきます。
目次
定年退職の場合
定年延長制度の影響
定年延長により、同じ年齢・階級でも退職時期が1年異なるケースが発生しています。「10月1日以降に誕生日を迎える人は1年延長」というように、個人の状況により定年のタイミングが変わります。
これにより:
- 安心した人:安定した地位と収入を1年延長できる
- 困惑した人:退職金受給が1年先延ばしになった
個人により受け止め方は様々です。
職業能力開発訓練(旧グリーンプログラム)の現実
定年の約10年前に参加する職業能力開発訓練。特に国家資格を保有していない隊員にとって、定年後の現実を突きつけられる場となります。
重要な事実:MOSのほとんどは民間企業では通用しません。
私は医療の国家資格を保有し、自衛隊でもその資格を活用して常に実務に従事してきました。そのため退職後の就職には困らない状況でしたが、多くの隊員が途方に暮れている姿を目の当たりにしました。
定年前業務管理教育の重要性
2佐以下が受ける定年前業務管理教育では、重要な現実が伝えられます。
覚えておくべきこと:定年前は2佐だったとしても、民間企業では新人扱いです。
再就職の現実
再就職先の多くは、人生の先輩であるOBからの紹介によるものです。
就職先の例:
- 保険会社
- 銀行
- 警備会社
- 幼稚園バスの運転手
年収の現実:
- 年収は大幅に下がります
- 手取り15万円程度が実情
- 医療従事者でも年収は大きく下がります
ここで初めて、自衛官の年収の高さを実感することになります。
退職金の罠
退職金が一時的に入ってくるため、金持ち気分になる方もいますが、通帳の数字は増え続けることはありません。贅沢な暮らしをしてきた方は、定年後の生活の質を見直す必要があります。
【実話】再就職での課題
私の知人の実例をご紹介します:
事例①:准尉・曹長として定年まで勤務後再就職したが、自分より若い人に指示されることに耐えられずすぐに退職。
事例②:陸曹で定年となったが、再就職先で細部まで指示されず何をしたらいいかわからない。自分で考えて仕事をすることが「とても大変」と愚痴を言うOB。
これらの事例から見えるのは、自衛隊での経験が民間企業でのスキルに直結しない場合があるということです。組織として結果だけでなく、思考過程の評価も重要であることを強く実感します。
定年後の生活設計
再就職するかしないかは個人の選択ですが、以下の準備が必要です:
必要な準備:
- 生活防衛資金として2年分の生活費を確保
- 保険の見直し
- 住宅ローンの返済計画
- 医療費の見積もり
依願退職の場合
依願退職といっても、年代により考えるべきことが大きく異なります。
20代の場合
特徴:
- 規律ある営内生活を経験済み
- 身の回りのことは自分でできる
- 一人暮らしへの憧れ
退職理由:
- 新しいことへの挑戦意欲
- 規則に縛られる生活からの脱出願望
- 恋人との時間を優先したい
メリット:
- まだ年収が高くない時期のため、転職で年収アップが見込める
- やる気に満ちており、適応力がある
- 「前向きな退職」と言える
現代の特徴:
- パチンコではなく、スマホで株式投資やFXを行う世代
- 新しい技術や投資手法への適応力が高い
- 安全な投資と投機を使い分けた資産形成が可能
30代の場合
ライフステージ:
- 結婚、出産、マイホーム購入の時期
- 仕事では現場で活躍
- 子育てとの両立が課題
退職のきっかけ:
- 転属による単身赴任の負担
- 度重なる引っ越し
- 責任の重さによるストレス蓄積
重要な考慮点: 「レンジャー」「空挺」「スキー指導官」などのMOSは取得困難ですが、退職後に活かせる場面は限定的です。これらは自衛隊内でのみ有効な資格です。
推奨する準備: 依願退職を考えているなら、国家資格取得のための自己投資を強く推奨します。
40代の場合
特徴:
- 自衛隊歴20年以上
- 人生の半分以上を自衛官として過ごす
- 自衛隊の規則が常識となっている
健康面の課題:
- 健康上の理由で配慮が必要になることが増加
- メンタル不調による休職
- 入退院の繰り返し
心理的特徴:
- 年収低下を避けたい気持ちが強い
- 新しいことへの恐怖心
- 株式投資などに興味はあるが始め方がわからない
私の経験: 私は40代で依願退職しました。ふるさと納税、iDeCo、株式投資、つみたてNISAをすべて活用しています。新しいことへの挑戦は非常にワクワクします。今後は不動産経営(不動産投資)にもチャレンジする予定です。
50代の場合
現実: 私は定年目前の50代で依願退職する人に出会ったことがありません。
一般的な行動:
- 定年までのカウントダウン開始
- 再就職に向けた情報収集
- 資格取得の開始
人気の資格: 乙種第四類危険物取扱者資格の講習会参加者が多いですが、収入への直結度は低く、お小遣い程度の収入となります。
重要な気づき: ほぼ全てを自衛官として過ごした場合、世の中のビジネスについて知らないことが多いです。雇われて働く形でなくても、趣味を仕事にできれば「楽しく」働けます。
退職前に準備すべきこと
経済面の準備
必須項目:
- 生活防衛資金:2年分の生活費を確保
- 保険の見直し:民間保険への切り替え検討
- 住宅ローン:返済計画の見直し
- 医療費:健康保険変更に伴う負担増の見積もり
スキル・資格の準備
推奨資格:
- 国家資格の取得(業界により異なる)
- 汎用性の高いIT系資格
- 業務独占資格(特定業務を独占できる資格)
避けるべき資格:
- 自衛隊内でのみ有効なMOS
- 収入に直結しない趣味的資格、民間資格
心理的準備
重要なマインドセット:
- 民間企業では新人からのスタート
- 年収低下は避けられない現実
- 自主的な判断力が求められる
- 年下の上司の可能性
まとめ
退職を考えた時に知っておくべき現実について、私の経験と知人の事例をもとに定年退職と依願退職に分けてご紹介しました。
重要なポイント
- 年齢が上がるほど年収も高くなり、再就職時の収入ダウンの衝撃は大きくなります
- 計画的な準備なしに退職することは避けるべきです
- 国家資格などの汎用性の高いスキルの重要性
- 民間企業での働き方の違いを理解する必要性
最後に
人生は一度きりです。後悔のない選択をするためにも、十分な準備と情報収集を行ってください。
退職を考えている自衛官とそのご家族を応援しています。
※この記事は個人の経験に基づくものです。退職に関する具体的な手続きや制度については、各部隊の人事担当者や専門機関にご相談ください。