この記事には広告が含まれる場合があります。


はじめに:強くなければダメ?その誤解に苦しむ人へ
自衛官と聞くと、多くの人が「タフでメンタルも鋼」というイメージを持つかもしれません。でも実際には、心優しく繊細な気質を持つ人も少なくありません。私もその一人でした。
今回は、自衛官という職場でHSP気質がどのように現れるのか、またその中で「自分を守る」選択肢について、一人の元幹部自衛官としてお話ししたいと思います。
HSPとは?──繊細さは弱さではない
HSP(Highly Sensitive Person)とは、音や光、周囲の感情などに敏感に反応する気質を持つ人のこと。人口の15〜20%に存在すると言われています。以下のような特徴が挙げられます:
-
小さなことにも気がつきやすい
-
他人の感情に影響を受けやすい
-
一度にたくさんのことをこなすのが苦手
-
感覚過敏(音や匂い、視覚刺激など)
HSPは「気にしすぎ」「打たれ弱い」と誤解されがちですが、実は深く物事を考えられる力や共感性の高さを持つ、尊重されるべき個性なのです。
自衛隊という組織とHSP気質のギャップ
私が幹部自衛官として勤務していた頃、「とにかく我慢」「結果がすべて」といった価値観が組織には根強くありました。
-
上司からの厳しい言葉がずっと頭から離れない
-
長時間の集団行動が続くと疲れてしまう
-
急な号令や騒音に驚きやすく、気持ちの切り替えに時間がかかる
こうした日常のストレスに「なぜ自分だけこんなに辛いのか」と自分を責めてしまうことが続き、最終的には心が限界に達し、バーンアウトしてしまいました。
災害派遣での経験──「気づきすぎる繊細さ」が活きた場面も
私が参加した災害派遣では、被災者支援ではなく、現地に派遣された隊員たちの健康管理を担う役割を任されていました。そんな中でも、HSPとしての気質が活かされたと感じる場面がいくつもありました。
-
体調を崩しやすい隊員のちょっとした異変に早く気づけた
-
過度に干渉せず、静かに見守る姿勢で信頼を得られた
-
周囲の緊張感や空気の変化を敏感に察知し、ケアや声かけのタイミングを計れた
一方で、人の多さや作業音、常に変化する状況に圧倒されそうになることもありました。「気づきすぎる」ことが武器にもなり、負担にもなる──この経験を通して、HSPとしての自分をさらに深く理解できた気がします。その気質は、誰かの支えとなる力にもなり得るのです。
「辞めたい」と思うのは甘えじゃない
自衛隊という組織は、命を守るという重要な任務を担っています。その分、プレッシャーや規律も非常に厳しいのが事実です。
でも、それが「合う人」もいれば、「合わない人」もいる。
たとえ使命感があっても、自分をすり減らしながら続けていては、いつか心と身体が壊れてしまいます。
「辞めたい」と思う気持ちは、心が出している大切なサインかもしれません。
心を守る「選択肢」はもっとあっていい
私は元々自衛官である看護師「看護官」として、自衛隊生活のほとんどを病院勤務で過ごしました。退職後はパート看護師として民間の医療機関でも働いてみましたが、自衛隊以外の病院での業務の適当さに嫌気がさし、看護から距離をとりました。現在は、自分のHSP気質を受け入れながら、価値観の合う人たちと交流し、個人事業主として自分のペースで働けるスタイルを築いています。とても充実した毎日を送っています。
-
環境や人間関係に敏感な自分を責めない
-
一人の時間を確保しながら、心を整える
-
同じように悩む人たちとつながる
こうした工夫で、私は少しずつ自分らしさを取り戻していきました。
まとめ:HSPだからこそ、自分の心を大切に
HSPは特別な「気質」です。無理に強くならなくても、自分に合った働き方や環境を選ぶことで、もっと自分を活かすことができます。
今、自衛隊で悩んでいる方がいたら、まずは**「自分の感じていること」を否定せず、大切にしてほしい**と思います。そして、自分にとって何が必要なのか、ゆっくりでも構いません。考える時間を持ってください。